ウィッグをかぶると、こめかみやサイド(側頭部)が浮いてしまい、横から見ると隙間が目立つことがあります。アジャスター(ウィッグ後頭部のサイズ調整フック)を締めても改善せず、どこを直せばよいかわからないまま困ってしまう場合もあると思います。
こうした浮きは、アジャスターとは別の箇所に原因があることが多く、対処の順序を知っておくと改善につながりやすくなります。
この記事でわかること
- こめかみ・サイドが浮く5つの原因
- 最初に試すべき耳芯(こめかみワイヤー)の調整手順
- 地毛の下地を整えるための準備
- アジャスターの役割と、効きにくい理由
- フィット感を補うインナーキャップ・コーム・テープの使い方
- 自分での調整で改善しない場合の選択肢
こめかみ・サイドが浮く原因を確認する
こめかみやサイドが浮くとき、最初に「サイズが合っていないのでは」と考えることが多いかもしれません。しかし原因は複数考えられ、対処法もそれぞれ異なります。まず自分に当てはまる原因を整理するところから始めましょう。

原因① 耳芯(こめかみワイヤー)が調整されていない
多くのウィッグには、両こめかみ部分に「耳芯」と呼ばれる樹脂製のワイヤーが内蔵されています。このワイヤーが直線的なままだと、頭の丸みとの間に隙間が生まれやすくなります。こめかみ・サイドの浮きで最も多く見られる原因のひとつです。初めてウィッグをかぶった日に浮きを感じた場合や、洗浄・乾燥後に着用したときに隙間ができる場合も、この耳芯の調整が行われていないことが原因になっていることがあります。
原因② ウィッグのサイズが大きすぎる
ウィッグの既製品はS・M・Lなどのサイズ展開で販売されていますが、同じサイズ表記でもメーカーによって実寸が異なります。頭囲より大きめのキャップをかぶると、側頭部に余分な空間ができ、こめかみ・サイドが外側に膨らんで見えます。医療用ウィッグを使用している方は、治療の経過で地毛の量や頭の形が変化することがあり、かぶり始めはちょうどよかったウィッグが途中から浮きやすくなることもあります。
原因③ 地毛の下地が凸凹になっている
ウィッグネットの下で地毛が均一に収まっていないと、耳周辺の短い毛やこめかみの生え際がネットから押し出され、ウィッグの縁を浮き上がらせることがあります。特に地毛が多い方、または最近髪が伸びてきた方に起きやすい状況です。
原因④ アジャスターの調整だけでは届きにくい
アジャスターはウィッグの後頭部(えり足の内側)についているサイズ調整フックです。主に後頭部のフィット感を調整するもので、どれだけきつく締めても、こめかみ・サイドの浮きを直接解消することは難しい構造になっています。「アジャスターを最大に締めても改善しない」という場合、こめかみ・サイドへの対処として別の方法が必要です。
原因⑤ ウィッグの着用位置がずれている
耳芯が左右非対称な位置にきていると、ウィッグ全体が傾き、片側のこめかみだけが浮くことがあります。つむじの位置に合わせようとすると左右の長さが均等にならないことがあるため、耳芯の位置を左右そろえることが着用位置の基準になります。
最初に試すべき対処:耳芯(こめかみワイヤー)の調整
こめかみ・サイドが浮く場合、最初に試みるべきなのが耳芯の調整です。耳芯はウィッグのこめかみ部分を触れると感じられる、少し硬い樹脂製のワイヤーのことです。指で形状を変えられる設計になっており、頭の丸みに合わせてカーブをつけることで顔周りへの密着感が改善します。

着用した状態でこめかみに触れ、芯がどの方向を向いているかを確認します。直線になっている、または外側に向いている場合は、指でゆっくり内側(顔側)にカーブをつけましょう。急に大きく曲げると逆に締め付け感が出たり、ワイヤーが折れやすくなったりするため、少しずつ調整しながら鏡で確認することが大切です。
耳芯の左右対称を確認する
調整後は、左右の耳芯が対称な位置にあるかどうかも確認します。耳芯の左右の高さがそろっていると、ウィッグ全体の着用位置が安定します。左右の耳の上にそれぞれ耳芯の先端がくる位置を目安にすると整えやすくなります。
耳芯を調整しても浮きが残る場合は、以下のステップに進みましょう。
地毛の下地を整える:こめかみ周辺の準備
ウィッグをかぶる前の下地が整っていないと、耳芯を調整してもこめかみ・サイドが浮きやすくなります。地毛の処理は、ウィッグネットをかぶる前の段階で行う作業です。

地毛がある場合の下地の整え方
まず耳の周辺の毛を耳にかけて、こめかみ・耳上の毛が外側に向かないようにします。その上からウィッグネットを後頭部から前に向かってかぶせ、耳周辺の毛がネットの内側に入るよう指で整えます。
髪が長い・ボリュームがある場合は、左右を三つ編みにして耳の後ろに沿わせ、ヘアピンで固定してからネットをかぶると頭部全体がより平らにまとまります。お団子やまとめ方が高い位置だと、頭頂部に凸凹ができてウィッグが安定しにくくなるため、できるだけ低く・平らな状態で収めることがポイントです。
地毛がない・少ない場合(医療用ウィッグを使用している方)
地毛が少ない場合も、ウィッグネットで頭部全体を均一に包むことが大切です。ネットが一部だけずれたまま重ねてかぶると、その凸凹がウィッグの浮きにつながることがあります。ネットが頭部全体に均等にかぶさっているかを着用前に確認しましょう。
医療用ウィッグを使用している方で頭皮が敏感な場合、ネットの素材(肌触り・伸縮性)によっても着け心地が変わります。敏感な状態のときは、低刺激素材のネットを選ぶようにすることをお勧めします。
アジャスター(後頭部の調整フック)の役割と限界を知る
アジャスターとは、ウィッグの後頭部内側についているサイズ調整のためのフックです。複数の段階に分かれており、フックをかける穴の位置を変えることで後頭部のフィット感(頭へのなじみ具合)を調整できます。

アジャスターの正しい調整手順
- ウィッグをかぶる前に、後頭部のアジャスターを最もきつい設定にする
- ウィッグをかぶり、後頭部のフィット感を確認する
- きついと感じたら、ちょうど良いと感じるところまで1段階ずつゆるめていく
- 左右のフックが同じ段階に設定されているか確認する
アジャスターを締めてもこめかみが浮く場合
アジャスターを最もきつい設定にしてもこめかみ・サイドの浮きが残る場合、アジャスターの構造上の理由からそれ以上の改善は難しいことがあります。こうしたケースでは、耳芯の調整や次項のインナーキャップなど別の方法に切り替えることで改善が見込めます。
アジャスターを締めすぎると後頭部だけがきつくなる一方、こめかみ・サイドは浮いたままというアンバランスな状態になることがあるため、締め具合は後頭部の圧迫感で判断するようにしましょう。
フィット感を補う:インナーキャップ・コーム・テープの活用
耳芯と下地の整備を行ってもまだ浮きが気になる場合は、補助的な手段を組み合わせることでフィット感が改善することがあります。

インナーキャップを活用する
インナーキャップ(アンダーキャップ)は、ウィッグネットの上・ウィッグの下にかぶる伸縮素材の帽子状アイテムです。ウィッグネットとウィッグの間に一枚はさむことで、こめかみやサイドの隙間を埋め、クッション的な役割を果たします。
ウィッグが少し大きく感じる場合に隙間を補正するほか、髪が伸びてきてウィッグが浮きやすくなったときにも、頭部を平らに整える役割で役立ちます。シリコンすべり止めやマジックテープが内側についているタイプは、ずれ防止の効果も期待できます。
こめかみ付近のコームを確認する
ウィッグの内側にはコーム(小さなくし状のクリップ)が縫い付けられていることがあります。こめかみ付近のコームが地毛またはウィッグネットのフチにしっかり差し込まれているか確認しましょう。コームが浮いた状態になっていると、こめかみ・サイドのずれが起きやすくなります。地毛がない場合はネットのフチにコームを差し込み、上から押してしっかり留めます。
ウィッグ専用テープを使う
ウィッグ専用の両面テープをこめかみ・もみあげ部分の内側に貼ることで、浮きを補助的に抑える方法もあります。テープはウィッグをかぶって位置が決まってから圧着するのが基本です。インナーキャップの上から貼る方法もあります。
ただし、治療中の頭皮が敏感になっている場合(医療用ウィッグを使用している方)は、肌への直接使用に注意が必要です。テープを使用する場合は、担当医や医療用ウィッグを取り扱う専門店に相談してから試すことをお勧めします。
アジャスターでも改善しない場合:縫い縮め加工と専門家への相談
ここまでの手順をすべて試してもこめかみ・サイドの浮きが改善しない場合は、ウィッグのサイズがアジャスターの調整範囲を超えている可能性があります。そのような場合は、縫い縮め加工か専門家への相談を検討しましょう。

縫い縮め加工とは
ウィッグを裏返し、サイドや後頭部の余りが出ている部分をつまんで縫い縮める方法です。縫い代をなみ縫いで作り、まつり縫いで本体に固定する手順で、縫い糸をほどけば元のサイズに戻せる可逆的な加工になります。
ただし、自分で行う場合は縫い目が見えたり、縫い縮め量の判断が難しかったりと、仕上がりに差が出ることがあります。高価なウィッグや総手植えウィッグは特に繊細なため、自分での加工より先に専門サロンや購入したウィッグ専門店への相談を優先してください。
サイズが大きく合わない場合は、失敗しないウィッグの選び方6つのポイントも参考に、購入時のサイズ確認を見直すことが根本的な解決につながります。
専門家への相談
アデランス・スヴェンソンなどの大手ウィッグメーカーでは、購入者向けのフィット調整サービスを利用できる場合があります。自分での調整が難しいと感じたら、まず購入先のサポート窓口に相談するのが安全です。
医療用ウィッグを使用している方は、病院内のアピアランスサロンや、医療用ウィッグを専門に取り扱うサロンに相談するという選択肢もあります。医療用ウィッグを選ぶ前に知っておきたい5つの軸では、医療用ウィッグの選び方についても整理しています。
まとめ:対処の優先順位を確認して試してみましょう
ウィッグのこめかみ・サイドが浮く原因は一つではありませんが、多くの場合は耳芯の調整と地毛の下地整備から始めることで改善が期待できます。

今回ご紹介した対処の流れをまとめると、以下のとおりです。
- 着用位置の確認:耳芯が左右対称の位置にあるかを確認する
- 耳芯の調整:指でゆっくり内側にカーブをつける
- 地毛の下地整備:こめかみ・耳周辺の毛をネットにしっかり収める
- アジャスターの再確認:左右均等に設定されているかを見直す
- インナーキャップで補う:隙間が残る場合に一枚はさむ
- コーム・テープで補助固定:こめかみ付近の固定状態を確認する
- 縫い縮め加工または専門家への相談:アジャスターの限界を超えている場合
こめかみ・サイドの浮きが続くと、ウィッグ全体のシルエットが落ち着かない印象になることがあります。今回ご紹介した手順を順番に試しながら、自分に合ったフィット感を見つけてみてください。